クボタ事件(大阪地判平23・10・31) 偽装請負解消し直接雇用、期間定めた契約の成否は 署名押印は承諾の意思表示
派遣先が偽装請負を解消し、有期の直接雇用に切り替えられた元社員らが雇止めされた事案。期間雇用を承諾しないことは会社も知っていたとして、心裡留保により期間を定めた部分の無効を訴えた。大阪地裁は、異議を述べずに契約書に署名押印し、承諾の意思表示がなかったとは認められないと判示。最高裁判決を踏襲し、直接雇用前の派遣先との黙示の契約を否定した。
「心裡留保」認めず 黙示的にも不成立
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
労働者甲らは、株式会社A、B、Cとそれぞれ派遣労働契約を締結し、乙会社の恩加島工場に派遣されて就労していた。
乙会社の関連会社は、平成18年12月、大阪労働局の立入調査を受けたところ、その際、労働者派遣法40条の2第1項の「派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務について、派遣元事業主から派遣可能期間を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならない」との規定に違反するとの是正指導を受け、その是正措置として、「違反事項に係る労働者派遣の役務の提供を受けることを中止すること」との指導を受けた。
その後、甲らは、平成19年4月1日付で乙会社との間で期間の定め(雇用期間6カ月)のある本件直接雇用契約を締結した。甲らは、契約期間の上限(最大2年間)まで3回契約更新されたが、その後の契約更新は行われなかった。
そこで、甲らは、①乙会社の恩加島工場で就労を開始した当初から、乙会社との間で黙示の雇用契約が成立していた、②…
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