全日本手をつなぐ育成会事件(東京地判平23・7・15) 労委出頭中の有給扱い廃止、就業規則改正し効力は 公的活動への参画に悪影響
社会福祉法人の職員が、都労委に証人出頭した公民権行使の時間に賃金支払いを求めた。東京地裁は、就業規則を改正し、遅刻や早退としない旨の規定を削除したことは、公的活動に容易に参画し得る地位ないし権利に負の影響を与えると判示。賃金の減少は些少でも、就業規則の不利益変更に当たり、同意しない者に受忍させるほどの高度の必要性は認められないとした。
不利益変更で無効 賃金減わずかだが
筆者:弁護士 緒形 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
被告は、知的障害者の更生相談に応ずる事業等を行う社会福祉法人であり、原告は、被告との間で期限の定めのない雇用契約を締結し、正規職員として勤務する者である。
被告における平成13年6月1日施行の旧就業規則には、「勤務時間及び休憩時間」第15条において、「不可抗力の事故のため、又は公民権行使のため遅刻または早退した時は、届け出により遅刻、早退のとり扱いをしない」と規定されていたが、平成20年12月1日施行の職員就業規則等には、同条のような規定は設けられてない。
このような状況下で、原告は、平成21年5月18日から平成22年9月24日までの間、東京都労働委員会から証人として呼出しを受け出頭した。これにより、原告は、被告において就労することができなかったが、被告は、この不就労分につき賃金カットを行った。
判決のポイント
①労働者が使用者に対して労務を提供しない場合には、使用者は、それに対応する賃金を支払う義務を負わない(ノーワーク・ノーペイの原則)。…にもかかわらず本件旧就業規則は、…
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