日本トムソン事件(大阪高判平23・9・30) 偽装請負を有期直用し雇止め、賠償命じた一審は? 派遣法は行政上の取締法規
5年超の違法派遣で、是正指導を受けた派遣先に有期雇用された派遣労働者らが、雇止めされたため地位確認等を求めた事案の控訴審。一審は、雇用責任は否定したが50万円の賠償を命じた。大阪高裁は、派遣法は行政上の取締法規で、労働者の個々の利益を保護する目的を有しないと判示。受入制限の違反に罰則はなく、直ちに不法行為には当たらないとして一審を取り消した。
利益の保護目的外 不法行為といえず
筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)
事案の概要
Y社は、Z社の社員であったXら9人を、Zと平成15年12月に出向協定、17年10月に請負契約、18年8月に派遣契約に基づきYの事業所で就労させてきたところ、労働局の是正指導があり、Xらとの間で21年4月24日から同年9月30日までの期間雇用契約を締結したが、更新せず期間満了で雇止めをした。
Xらは、①Yと期間の定めのない黙示の雇用契約の成立、そうでないとしても雇止めは不当解雇だとして雇用契約上の地位の確認と給与の支払い、②偽装請負などの不法行為で精神的苦痛を受けたとして、慰藉料各300万円の支払いを求めた。
一審判決(神戸地裁姫路支判平23・2・23)は、①について、黙示の雇用契約が成立していたとまで評価するのは困難であり、雇止めが無効だとは認められないとして棄却したが、②について、Yが労働形態を巧みに変化させ、労働局の是正指導まで5年超にわたって違法状態にあることを十分に認識していたと推認され不法行為を構成するとして、Xらに対し各50万円の支払いを命じた(双方控訴)。…
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