西濃シェンカー事件(東京地判平22・3・18) 休職期間を延長し軽作業に従事させたが復職認めず リハビリは労務提供でない
脳出血で右片麻痺となった休職者が、休職期間満了後のリハビリ期間として休職期間を延長されたが満了により退職とされた事案で、東京地裁は、作業は無給で労働契約に基づく労務の提供ではなく復職とはいえないこと、退職の時点で従前の通常業務を遂行できないことは明らかで、現実的に配置可能な業務の存在も認められないことから休職期間満了による退職とした。
従前の業務はムリ 回復見通し立たず
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
会社(西濃シェンカー株式会社)は、航空ならびに海上運送取扱業等を営む株式会社である。
労働者甲は、平成8年10月1日、会社との間で担当業務や職種を限定せず、期間の定めのない労働契約を締結した。
甲は、平成17年9月23日、自宅で脳出血を発症し、後遺症により右片麻痺となった。甲は、会社から、平成18年3月26日、同日から1年間の休職を命じられた。そして、平成19年1月1日、就業規則の規定が変更され、休職期間が1年から1年6カ月に伸ばされたことに伴い、同年9月25日まで延長された。
また、会社は、健保組合が支給する延長傷病手当附加金の受給可能期間が約1年間残存していたことから、休職期間を平成20年10月31日まで延長した。
甲は、平成19年10月から、概ね週に3日の頻度で本社に出社し、1日に約2時間30分程度作業に従事した。その後、甲は、同年10月10日から同月31日まで1日に約6時間程度作業に従事した。なお、甲に対し、作業に従事したことに対する対価は支払われていない。
甲は、平成20年9月19日の面談の際、A人事部長から「同月25日をもって契約社員として復職し、給与額を15万円とする」旨告げられたと主張したが、会社は、休職事由が消滅していないとして、甲に対し、平成20年10月20日、就業規則の規定に基づいて、休職の延長期間の満了日(同年10月31日)をもって退職となる旨を通知し、その後の就労を拒否した。…
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