ヤマダ電機・アデコ事件(大阪地判平23・9・5) 派遣先の社員に殴られケガ、使用者に対し賠償請求 事業執行との関連性はない
派遣先の家電量販店の社員に殴られ聴力を失ったとして、派遣スタッフが「先」に使用者責任、「元」に安全配慮義務違反の損害賠償を求めた。大阪地裁は、暴行は借金などの私的トラブルから突発的に生じたもので、勤務時間外であるなど事業執行と関連性はなく使用者責任は負わないと判示。「元」の苦情相談窓口にも実際に相談はなかったとして、安全配慮義務違反も否定した。
私的トラブルに端 「元」も把握できず
筆者:弁護士 石井 妙子 (経営法曹会議)
事案の概要
Xは、平成20年3月からY1に雇用され、Y2に派遣されてレジ業務を行っていた派遣労働者である。Y3は、Y2の従業員であり、Xと同じフロアで販売を担当していた。XとY3は同年齢であったことなどから親しくなった。
Y3は、6月、8月、Xに各1万5000円を貸したが、返済が約束に遅れたうえ、暴言を吐かれるなどしたことから、Xと距離を置くようになった。8月24日、Y3は、店舗地下の勤怠打刻機前で、Xに対し、居室の鍵の返還を求めたが、無視されたうえ、にらみつけるような仕草をされたため、かっとなってXの頭部左側を殴打した。
Xは当日、左側頭部打撲・加療5日間の見込みと診断された。Y3は上司らに促され、Xに対し9月中に治療費などとして15万7600円を支払った。
Xは、暴行で左耳の聴力を失うなどの損害を負ったと主張して、Y3に不法行為に基づき、Y2に使用者責任に基づき、Y1に安全配慮義務違反に基づき、連帯して損害賠償4500万円余を支払うよう求めた。…
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