ビクターサービスエンジニアリング事件(東京高判平22・8・26) 業務委託先の個人代行店との団交拒否認めた判断は 労組法上の労働者ではない ★
音響機器メーカーから製品修理業務を受託する個人代行店が団交を拒否された事案で、一審が救済命令を取り消したため、国が控訴した行政訴訟。東京高裁は、一審を踏襲し、業務受注手続きや入金処理で一定の義務を負うが委託内容による制約に過ぎないとしたうえで、時間・場所の拘束はなく報酬も最低保障のない出来高払いであることから労組法上の労働者ではないとした。
勤怠管理なく自由 報酬は完全出来高
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
X社では、法人組織の代行店や個人営業の代行店と「業務委託契約」を締結し、代行店にビクターの音響製品の修理業務等を委託していたところ、個人営業の代行店(以下「個人代行店」)が、A労働組合を結成した。
Aは、X社に対し、代行店の待遇改善について団体交渉を申し入れたが、X社は、個人代行店は労組法上の労働者に当たらないとして、団交に応じなかった。このため、A側は、不当労働行為であるとして大阪府労働委員会に救済申立てをした。府労委が、労組法上の労働者性を肯定して救済命令を発出したため、X社はこれを不服として中労委に再審査を申し立て、中労委が再審査申立てを棄却したことから、命令の取消しを求めて行政訴訟を提起した。
原判決(東京地判平21・8・6)が、X社の請求を認容したため、国・中労委が控訴した。
判決のポイント
労組法上の労働者は、…労働契約、請負契約等の契約の形式いかんを問わず、労働契約上の被用者と同程度に、労働条件等について使用者に現実的かつ具体的に支配、決定される地位にあり、その指揮監督の下に労務を提供し、その提供する労務の対価として報酬を受ける者をいうと解するのが相当である。
具体的には、…
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