アメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニー事件(東京地判平24・1・13) 退社2年以内に競合他社へ移った役員の退職金ゼロ 職業選択の自由不当に侵害 ★
2012.06.11
【判決日:2012.01.13】
退職後2年以内に競合他社に転職すれば、退職金を不支給とする合意は無効として、生保会社の元執行役員が支払いを求めた。東京地裁は、合意は職業選択の自由を不当に侵害すると判示。顧客情報流出を防ぐために転職を制限することは正当でないうえ、役員は機密情報を扱う立場になく、禁止される業務や地域は広範で期間も長すぎるなど公序良俗に反して無効とした。
機密情報は扱わず 広範囲で転職制限
筆者:弁護士 中町 誠 (経営法曹会議)
事案の概要
本件は、外資系生命保険会社である被告会社の日本支社における元執行役員であった原告が、退職後、競業他社の取締役執行役員副社長になったところ、競業避止条項に抵触するとして退職金を支給されなかったため、退職金支給の条件である本件競業避止条項は公序良俗に反して無効であるとして当該退職金3037万円余を請求した事案である。
本件競業避止条項は、「原告は、被告やAカンパニーズのグループ会社を理由の如何を問わず自らの意思で退任した場合、退職後2年間、被告日本支店やAカンパニーズのバンクアシュアランス事業に競業したり、原告が在任中に被告日本支社やAカンパニーズで携わったその他の事業に競業する会社の従業員、役員、顧問、コンサルタントやエージェントとして勤務しないことに同意する」となっている。
判決のポイント
(1)一般に、労働者には職業選択の自由が保障されている(憲法22条1項)ことから、…
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平成24年6月11日第2876号14面 掲載