エーディーディー事件(京都地判平23・10・31) 納品後の不具合多く受注減、現場責任者に賠償請求 使用者が負担すべきリスク ★
納品したソフトウエアに不具合が多いとして受注量を減らされた会社が、現場責任者に労働契約上の義務違反に基づく損害賠償を求めた。京都地裁は、業務命令の履行により発生するであろうミスは、命令自体に内在するものとして使用者がリスクを負うと判示。故意や重過失はなく、企業間で通常あり得るトラブルを労働者に負担させることは相当でないとして棄却した。
ミスは業務に内在 故意や重過失なく
筆者:弁護士 緒形 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
原告は、コンピューターシステムおよびプログラムの企画・設計・販売・受託等を主な業務とする会社である。原告はF社よりF社が制作した販売管理ソフトウエアGのカスタマイズ作業を受託していたが、被告は平成19年4月より同業務を担当するFチームの責任者兼担当窓口となった。
平成20年9月頃より、原告が納品するカスタマイズ業務についてF社が不満を持つようになった。例えば、原告において検証したうえで納品したはずであるのに、F社で検査するとすぐに不具合が生じ、原告にその改善を依頼し、改善されたとして納品されてきてもすぐに不具合が生じることが相次いだ。不具合の原因は、被告やFチームのメンバーのミスであることが多かった。不具合対応について、24時間以内に対応が完了しない場合、納期を通知することになっていたが、被告は、通知を失念していたこともあった。
F社は、原告のカスタマイズ業務の質が低下してきたことで、徐々に発注量を減らしたため、原告の売上げは低下した。また、原告は、被告に対し1カ月当たりおよそ24万~45万円分に換算されるプログラミング作業のノルマを課していたが、被告はこのノルマも未達であった。…
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