日本ヒューレット・パッカード事件(最二小判平24・4・27) 40日も無断欠勤、メンヘル不調が原因で解雇無効? 健診実施し休職検討すべき ★
約40日の無断欠勤は精神的不調が理由で、懲戒事由に当たらず諭旨退職処分を無効とした原審を不服として、会社側が上告した事案。最高裁は、欠勤理由である同僚らの嫌がらせは被害妄想だが、被害申告の経緯から会社は就業規則所定の「臨時の健診」を行い、休職処分を検討すべきだったと判示。直ちに正当な理由のない無断欠勤と扱うのは適切でなく、上告を棄却した。
原因は「被害妄想」 懲戒事由といえず
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
本件は既に第729回(本紙第2842号)において詳細な事案の説明がなされているので、事案の概要は簡潔に行う。
上告人(Y)の従業員である被上告人(X)は、被害妄想など何らかの精神的な不調により、実際には事実として存在しないにもかかわらず、約3年間にわたり盗撮や盗聴を通じて日常生活を子細に監視され、Xの情報が、Yの従業員に共有されており、Yの従業員が、Xに対しそのような情報をほのめかすこと等で嫌がらせを受けているとの認識を有しており、Yに被害に係る事実の調査を依頼した。Xは、問題が解決されたと判断できない限り出勤しない旨をYに伝えたうえで、約40日間にわたり欠勤を続けたため、Yは、Xに対し、平成20年8月25日に同年9月30日をもって諭旨退職処分とする旨の通告を行った。
Xは、就業規則所定の懲戒事由である正当な理由のない無断欠勤を理由に諭旨退職の懲戒処分を受けたため、Yに対し、本件処分は無効として、雇用契約上の地位を有することの確認および賃金等の支払いを求めた。…
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