三菱重工業事件(神戸地裁姫路支判平22・12・8) 派遣期間満了で請負に、注文者へ直接雇用求めたが 黙示の労働契約成立しない ★
三菱重工業の工場で働く請負労働者が、請負から派遣に切り替わったが期間満了により再度請負となり、実態は偽装請負として三菱重工業に黙示の雇用契約成立による地位確認を求めた。神戸地裁姫路支部は、最高裁判決を踏襲し、注文者は、従業員採用や賃金決定に関与しておらず、一度覚えれば指示を受けずにできる作業で指揮監督関係はみられないとして請求を退けた。
指揮監督みられず 「元」が賃金額決定
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
原告は、有限会社T鉄工に採用され、T鉄工・被告間の業務請負契約により被告の製作所で就労したが、同契約は労働者の供給を目的とするものであって職業安定法44条、労働基準法6条に違反して無効(民法90条)であり、また同目的を有する原告・T鉄工間の労働契約も無効であり、原告・被告間には就労開始当初から期限の定めのない黙示の労働契約が成立している等と主張して、被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めた。
判決のポイント
請負契約においては、請負人は注文者に対して仕事完成義務を負うが、請負人に雇用されている労働者に対する具体的な作業の指揮命令は専ら請負人にゆだねられている。よって、請負人による労働者に対する指揮命令がなく、注文者がその場屋内において労働者に直接具体的な指揮命令をして作業を行わせているような場合には、たとい請負人と注文者との間において請負契約という法形式が採られていたとしても、これを請負契約と評価することはできない。そして、上記の場合において、注文者と労働者との間に雇用契約が締結されていないのであれば、…
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