HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド事件(東京地判平23・12・27) 年俸1000万円超で役職採用、割増含めた合意有効? 賃金区分が明確でなく無効
外資系銀行に年俸1250万円でヴァイス・プレジデントとして中途採用され、退職後に未払残業代を求めた事案。労基法の管理監督者性や割増賃金を年俸に含める合意の効力を争った。東京地裁は、職務上の地位や権限から管理監督者性を否定。年俸の合意は割増賃金とそれ以外の部分が明確に区分されず無効としたが、法内残業は年俸に含めても法に反しないとしている。
管理監督者でない 法内残業分は不要
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
被告Y社は、訴外A銀行東京支店等の関連会社から受託した業務を行う外国法人であり、原告は、平成19年12月にY社に入社すると、A銀行東京支店へ出向し、個人金融サービス本部でVP(Vice President)として勤務していた。その採用時に期間の定めのない労働契約が締結され、原告の年俸は1250万円とされたが、3カ月の試用期間満了時に、Y社から本採用を拒否された。なお、原告とY社間の別件訴訟判決は、原告には就業規則の解雇事由が存在しており、解雇権濫用とも認められないとして、原告の請求を棄却した。
本件訴訟で、原告は、未払残業代とその付加金の支払い等を請求した。
Y社は、原告は労基法41条の管理監督者であるか、そうでないとしても割増賃金を年俸に含める合意が成立していた等と主張した。
判決のポイント
労働基準法41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体の立場にある者をいい、管理監督者か否かは、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきである。そして、管理監督者と認められるためには、①職務の内容が、少なくともある部門の統括的なものであって、…
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