テックジャパン事件(最一小判平24・3・8) 月180時間超で割増支払う契約、高裁は認容したが 残業分の明示必要と差戻し ★
月160時間労働を基準に上下20時間の範囲内は月給を定額払いとする雇用契約について、派遣労働者が割増賃金を求めた。高裁は契約の合理性を認めたが、最高裁は、各月の勤務日数が異なり労働時間が大きく変動するため、割増部分を判別できないとして審理のため原審に差し戻した。定額残業代について、相当する時間数と額を契約で明示するよう裁判官が補足している。
基本給に含めても 時間外大きく変動
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、人材派遣を業とする会社である被上告人に雇用されて派遣労働者として就労していた上告人が、被上告人に対し、平成17年5月から同18年10月までの期間における時間外労働に対する賃金(以下「時間外手当」という)およびこれにかかる付加金の支払い等を求める事案である。
原審(東京高裁)の確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。
(1)人材派遣を業とする会社である被上告人は、平成16年4月26日、雇用期間を同年7月31日まで、基本給を月額41万円、賃金の計算期間を毎月1日から末日までとし、毎月10日に前月分の賃金を支払う旨の約定の下に、上告人を派遣労働者として雇用した。上告人と被上告人との間の雇用契約においては、上記のとおり基本給を月額41万円としたうえで、1カ月間の労働時間の合計(以下「月間総労働時間」という)が180時間を超えた場合にはその超えた時間につき1時間当たり2560円を支払うが、月間総労働時間が140時間に満たない場合にはその満たない時間につき1時間当たり2920円を控除する旨の約定がされている。
原審は、上記事実関係等の下において、月間総労働時間が180時間を超える月の労働時間のうち、その超える部分における時間外労働に対する時間外手当の請求は認容すべきであるが、…
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