本田技研工業事件(東京地判平24・2・17) 不更新条項付き契約で雇止め、“雇用継続の期待”は 自ら退職届提出し利益放棄
11年余も有期雇用契約の更新、期間満了の退職、再入社を繰り返した自動車メーカーの期間工が、経営悪化に伴う不更新条項契約での雇止め無効を訴えた。東京地裁は、雇止めに異議や不満を述べず退職届を提出し、慰労金などを受領しており不更新条項は公序良俗に反しないと判示。雇用契約の継続への期待利益を放棄し、解雇権濫用法理の類推適用の前提を欠くとした。
不満や異議述べず 慰労金なども受領
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
Yは、四輪車、二輪等の製造、販売等を目的とする株式会社であり、Xは、平成9年12月1日、期間契約2カ月の有期雇用契約を締結し、Y栃木製作所真岡工場のパワートレイン加工モジュール(エンジン部品の製造ラインの部署)に所属して業務に従事した。
Xは、Yとの間で契約期間3カ月とする有期雇用契約を5回締結し、平成11年4月末日に期間満了により退職した。同年5月10日に入社し、有期雇用契約を繰り返し、平成12年4月に期間満了により退職した。以降も有期雇用契約の締結と契約期間満了・退職を11年にわたり継続していた。
Yは、平成20年11月28日、期間契約社員全員に対し、経済情勢等と完成車減産に伴い、全員雇止めとせざるを得ないことについて説明した。Yは、不更新条項を定める有期雇用契約を締結できるのであれば雇用契約書を提出してもらいたい旨要請した。Xは、同年12月末日で契約期間が満了し、雇用契約が終了する旨の不更新条項が記載されていることを認識した上で、同契約書に署名した。
平成20年12月31日、同月1日から同月31日までを契約期間とする有期雇用契約(本件雇用契約)の期間が満了したとしてYから雇用契約の更新を拒絶された。
そこで、Xは、雇止めが違法無効であるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めた事案である。…
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