山口工業事件(東京地判平23・12・27) 未払い賃金請求されたが取引先から報酬受領と反訴 利益相反行為で賠償命じる

2012.09.03 【判決日:2011.12.27】
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 元支社長の1カ月分の未払い賃金請求に対し、建設会社は横領や背任行為があったとして、損害賠償を反訴請求した。東京地裁は、月10万円の報酬を得て取引先の名刺を所持し活動したことは利益相反行為に当たると判示。誠実に業務を行えば会社に帰属した利益と推認し、約435万円を損害と認めた。なお、背信行為があっても賃金支払いを拒む理由にはなり得ない。

誠実に業務行わず 給料は支払い必要

筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)

事案の概要

 建設、土木工事業のY社は、平成15年、在日米軍の入札業務に関するノウハウ、人脈などを有するXを採用した。それに伴い、東京支社を設置し、Xを支社長にして在日米軍の入札業務のコンサルタント業へ進出し、A社ほか15社より業務委託を受けていた。

 しかし、Y社の甲社長とXとの信頼関係が不十分なまま推移し、Xは平成21年3月ころから他社の乙に頻繁に共同での起業をもちかけ連絡し合っていたが、同月10日付けにてA社などの取引先、顧客に対し、Y社の財務状況が困窮し、東京支社の閉鎖も予想される状況にあり、同年4月1日からXとY社の丙顧問らで別会社を開設して業務を継続遂行する旨の挨拶状を発送した。そして、同年3月31日、Y社を退職した。

 甲はXに対し、Xが退職に際して後任者と十分な引継ぎをしないうえ、Y社と競合関係になることなどにつき強く抗議し、Y社は同年3月分の給料・交通費を支払わなかった。

 そこで、XはY社に対し未払いの給料・交通費の支払いと、退職の前後に甲から脅迫的言動や、Xの取引上の知人らに対し名誉を毀損する発言をされたとして、慰謝料請求の訴えを提起した。…

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平成24年9月3日第2887号14面 掲載
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