松本市現場作業員懲戒免職事件(東京高判平21・10・8) 市職員が休日の酒気帯び運転で検挙され懲戒免職に 処分は社会通念に反しない
市職員が休日に酒気帯び運転で検挙され懲戒免職となったため取消しを求めた事案の控訴審。東京高裁は、一審同様、飲酒濃度に加え、住宅街を運転するなど危険性が低いとはいえないこと、社会的非難の高まりを受けて厳罰で臨むことを周知しており、処分が社会通念に反するとはいえないこと等から、事故は伴わなくても裁量権の逸脱、濫用はないとして請求を棄却した。
厳罰で臨むと周知 事故を伴わないが
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Y市の職員であるXは、平成19年7月の土曜日の夜、友人らとソフトバレーボールの練習をするために自動車を運転して出かけ、練習後、急遽行うことになった飲み会のために自動車で移動した。午前1時ころまでビール中ジョッキ1杯、焼酎グラス4杯ほど飲酒した後、運転代行を利用して帰宅したが、自宅から約700メートルのところにあるコンビニで代行車両を帰して自ら運転して自宅に向かう途中、追尾してきた自動車の警察官に検挙され、呼気1リットルにつき0.3ミリグラムのアルコールが検出された。なお、Xはそれまでの違反による点数の累積もあり、免許取消しの行政処分を受け、罰金20万円を納付した。
市の職員懲戒処分の指針は、飲酒運転の厳罰化傾向を背景に平成19年1月に改正され、酒気帯び運転をした職員の標準的な処分量定は、免職または停職とされた。Y市は、Xを懲戒免職とし、Xは、処分の取消しを求めて提訴した。一審(長野地判平21・3・27)が、処分は裁量権を濫用したものとは認められないとしてXの請求を棄却したため、Xが控訴した。
判決のポイント
公務員につき懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは、懲戒権者の裁量に任されており、懲戒処分は、…
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