X社事件(東京地判平24・3・30) 強制わいせつで有罪、合意退職者の退職金不支給は 22年務めた功労末梢できず
強制わいせつで有罪判決を受け合意退職した従業員が、懲戒解雇扱いで退職金を支給しないのは不当として、約1300万円の支払いを求めた。東京地裁は、私生活上の行為で示談で解決していること、業務上の支障、社会的評価・信用の低下も間接的なものにとどまり、約22年間の勤続の功労を抹消できるとはいい難いと判示。55%減額し、約600万円の支払いを命じた。
55%減じ支払いを 会社被害は間接的
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、会社(被告)と雇用契約を締結して労務を提供し、平成21年7月13日をもって合意退職した労働者甲が、会社に対し、雇用契約に基づく退職金支払請求権に基づいて、退職金1375万1750円およびこれに対する遅延損害金の支払いを求めたものである。
甲(原告)は、大学を卒業後、昭和62年4月1日に正社員として、会社に入社後、平成11年7月1日に関連会社に転籍したりなどした後、平成21年7月13日付けで会社を退職した。
甲は、会社在職中の平成20年に、自転車で通行中の当時16歳の女子高生に対し、強いてわいせつ行為をしようと企て、自転車を停止させ、着衣の上から被害者の乳房を触るなどした上、突き飛ばして転倒させ傷害を負わせた(本件非違行為)として逮捕され、会社の社員、元社員である旨報道されて、強制わいせつ致傷罪で懲役3年、5年間の保護観察付き執行猶予付き判決を受けた。
甲は、平成21年9月3日、退職した時点での上司に対し退職手当支給の可否について問い合わせたところ、平成21年12月24日に、「甲が会社に在籍していた平成20年○月○日に強制わいせつ致傷罪を犯したことは、社員就業規則により懲戒解雇処分に相当することを決定した」として、会社は甲に対し退職手当不支給を通知した。…
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