関東工業事件(東京地判平24・3・13) 同業転職の営業マンに顧客情報持ち出され賠償請求 秘密事項として管理されず
同業他社に転職した営業マン4人に対し、廃材リサイクル会社が、就業規則や誓約書上の機密保持義務、競業避止義務違反として損害賠償請求を行った。東京地裁は、仕入先の情報を業務上の秘密というためにはその内容が客観的に定められ、明確に管理されていることが必要と判示。情報は誰でも閲覧でき秘密とはいえず、競業避止規定も代償措置がないことから無効とした。
誰でも閲覧が可能 競業避止も無効に
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
原告は、主に廃プラスチックのリサイクルを業とする会社であり、廃プラスチック等を工場で粉砕するなどしたうえ、海外に輸出することを業としている。
被告Bらは原告との間で雇用契約を締結し、営業職として勤務していた。原告の就業規則には、社員は、退職後も会社、顧客および取引先等の機密事項および業務上知り得た情報、ノウハウ等を他に漏らしてはならない旨、会社の機密(営業ノウハウ、顧客情報等を含む)にかかわった社員は、退職後3年間はその機密を利用して、同業他社に転職し、または同業種の事業を営んではならない旨の規定がある。
原告は、平成21年8月11日付で、代表者名義で「会社、顧客並びに取引先等の機密事項および業務上知り得た情報、ノウハウなどを、社員は複写・自己使用・社外への持ち出しなどによって許可なく他に漏らしてはならない」との通知を発し、従業員は署名ないし押印した。
被告Bらは、平成22年3~5月にかけて原告を退職し、被告関東工業の代表取締役に就任するなどした。…
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