トムス事件(札幌地判平24・2・20) 支店業務移管で配転拒むたった1人の事務員を解雇 事業縮小によりやむを得ず
業務移管による配転命令を拒否した地方支店の事務員が、解雇され地位確認を求めた。札幌地裁は減収に伴う経営合理化の必要性を認めたうえで、就業規則所定の解雇事由である「事業の縮小・休止」による解雇はやむを得ないとし、仮に勤務地限定採用としても無関係と判示。ひとりで行っていた事務職を廃止するため人選の余地はないとして、解雇手続きも妥当とした。
勤務地が限定でも 人選の余地はない
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
Yは、無地の衣料等にオリジナルのデザインをプリントする加工衣料の製造、企画および販売を業とする会社であり、東京都内に本社を置くほか、国内では、札幌、仙台、埼玉、名古屋、大阪、広島および沖縄に支店を置いている。
Xは、平成18年3月1日、Yとの間で、雇用期間の定めなく、就業場所を札幌支店とし、業務内容を営業事務職とする雇用契約を締結した。営業事務職は、無地衣料等を顧客に販売する営業職の社員のサポートをすべく、営業所内で顧客管理および金銭管理等の事務処理を担当する一般職採用の社員である。
Yは、平成22年1月、経営合理化の方策の1つとして、愛知県に「コンタクトセンター」を設置し、ここに全国の無地衣料に関する業務を集約するとともに、同年9月までに、新宿支店、横浜支店および京都支店を順次閉鎖し、業務を同センターに移管した。
C営業本部長は、平成22年9月29日および30日、札幌支店を訪れ、Xと面談し、支店業務の統廃合に伴い同支店の営業事務職がなくなるので、会社都合で退職するか、平成23年1月1日付で東京本社に転勤とならざるを得ない旨を話した。しかし、Xは、勤務地限定採用社員であることから、命令を受けることができない旨回答した。…
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