杉並区(学校給食業務委託)事件(東京地判平16・5・19) 学校給食の調理委託、実態は偽装請負と住民が提訴 詳細手順書は業者への指示
杉並区の住民らが同区に対して、同区が委託した学校給食の調理業務は偽装請負で、公金支出は違法として契約差止めを求めた。東京地裁は告示37号に照らし、作業手順は個々の調理員ではなく受託業者に対する指示であり、学校栄養士が直接調理員に指示しても、業務管理を自ら行うことを否定すべきものではなく、独立性が欠けているとは認められないとして請求を却下した。
独立性を損なわず 栄養士関与しても
筆者:弁護士 岩本充史
事案の概要
本件は、東京都杉並区の住民であるXらが、同区が平成13年7月に給食業者との間でそれぞれ締結した学校給食調理業務委託契約について、労働者派遣法に違反すること等を主張して、地方自治法242条の2第1項1号に基づき、同区政策経営部経理課長を被告として、平成14~15年の各会計年度における学校給食調理業務委託契約の締結の差止めを求め、また、同区が契約の対価として委託料を支払ったことは違法な支出であり、同区に損害を与えたと主張して、同区長および同区政策経営部経理課長らを被告として、損害賠償を請求した事案である。
なお、本稿では、本件委託契約が労働者派遣法に違反するか否かの判断部分について検討を行うこととする。
同区政策経営部経理課長は、各給食業者との間で、学校給食調理の業務委託契約を締結した。なお、本件各契約には、各給食業者は、同区の指示する献立表、学校給食調理業務委託仕様書に従う旨の定めがあった。
本判決は本件各契約が、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭61・4・17労働省告示第37号)(本件告示)に適合するか否かの判断を行い、労働者派遣には該当せず、適法な請負であると判断した。…
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