ニチアス事件(東京地判平24・5・16) 退職から50年後の石綿団交、拒否は不当労働行為? 粗暴な言動から協議は困難 ★
石綿ばく露の補償をめぐる団交拒否について、県労委の不当労働行為の救済命令を中労委が取り消し、退職者分会らが国を訴えた。東京地裁は、退職から団交申入れまで約50年も経ち、労働者代表と扱うか会社が疑問を抱いても当然と判示。粗暴な言動を繰り返す組合員と正常な協議ができないとの会社判断は合理的で、労組法上の「正当な理由」に基づく団交拒否とした。
法上の正当理由に 応諾義務はあるが
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
原告分会は、かつて参加人において石綿(アスベスト)ばく露作業に従事していた者らを中心に平成18年9月に結成された労働組合で、結成当初の執行委員長はF、書記長はBである。
参加人は、高機能樹脂製品、耐火断熱材などの製造、販売などを行う株式会社であるが、王寺工場や羽島工場などの生産拠点でアスベスト製品を製造し、全国各地の支店・営業所などを通じて販売・施工してきた。
FやBらは、王寺工場において石綿製品の入出庫業務などに従事しており、参加人を退職してから25~50年を経過していたが、平成17~18年にかけて胸膜プラークと診断された。
Fらは、平成18年9月20日、参加人に対し、アスベストばく露作業による被害について現行制度の下では労災保険給付を受けられない立場の者に対する補償制度を作ることなどを要求して団体交渉の申入れ(第1回団交申入れ)を行った。Fらは分会結成前より、参加人に対し「お前は頭をかち割って血を見ないと分からんのか」などと怒鳴り、第1回団交申入れの際にも、「おとなしくしてりゃあ、おまえらなめとるんか」などと極めて粗暴な脅迫的言動を繰り返した。
参加人は、原告分会からの団交申入れに応じなかったため、原告分会は、不当労働行為に当たるとして救済命令の申立てを行った。…
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