X運輸事件(大阪高判平22・9・14) 定年後の嘱託再雇用、同じ業務だが月給ほぼ半分に 同一労働同一賃金 法規範として存在せず
嘱託再雇用者が賃金を正社員当時のほぼ半分にされ、勤務内容は同じで違法と差額を求めた。一審が棄却したため控訴したが、大阪高裁は、同一労働同一賃金の原則は法規範として存在しないと判示。賃金格差は軽視できないが、高年齢雇用継続給付金では61%となることまでも想定している等、高年法の予定する枠組みの範囲内で公序良俗に反しないとして請求を棄却した。
高年法の予定範囲 公序良俗反しない
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
X社の正社員であったAは、定年退職後、高年齢者雇用安定法の改正を受けて導入されたシニア社員(嘱託)として再雇用された。勤務内容は、定年前後を通じて、4トン車の運転の昼勤を担当しており、配車関係も従前と同様であった。
Aは、シニア社員として「時間給1000円、賞与なし」との契約を締結したが、正社員当時は月額42万余円(賞与分も算入)だったのに対し、シニア社員の給与額は月額23万余円であり、極めて低額であるとして、賃金合意の成立を争い、あるいは同一労働・同一賃金の原則、労働条件の不利益変更等の観点から公序良俗違反になると主張して、給与差額の支払い等を求めて提訴した。原審(奈良地判平22・3・18)が、請求を棄却したので、Aが控訴した。
判決のポイント
Aは、労働協約の余後効・黙示の合意の成立、高年法9条1項の私法的効力などを根拠に正社員当時と同額の給与を支払う合意があると主張するが、契約書に署名押印しているのであるから、他に特段の事情の認められない限り、…
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