東芝事件(東京高判平23・2・23) うつ病は業務上疾病で解雇無効と賠償命じた判断は 個体脆弱性から8割に減額 ★
女性技術者が、うつ病は業務上の疾病であり休職期間満了後の解雇無効と未払い賃金等の支払いを求めた事案の控訴審。東京高裁は、一審を踏襲し、同種の労働者のうち最も脆弱な者を基準に心理的負荷を判断するとしたうえで業務起因性を認定。9年を超えて寛解しない事態は、業務外にも発病を促進し寛解を妨げる個体側の脆弱性が存在したとして賠償額を8割に減じた。
長い間寛解至らず 業務外にも要因が
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
一審原告(被控訴人兼控訴人)は、平成13年10月、診断書(病名抑うつ状態)を提出し、欠勤を開始した。一審被告(控訴人兼被控訴人)は、一審原告の欠勤期間が就業規則に定める期間を超えた平成15年1月、休職を発令した。一審被告は、平成16年8月、一審原告に対し、通算条項を考慮した所定の休職期間満了を理由とする解雇予告を行い、同年9月9日付けで解雇した。
一審原告は、平成16年9月、労基署長に対し、うつ病が業務上の傷病であるとして、休業補償給付支給請求および療養補償給付たる療養の費用請求をしたが、労基署長は、平成18年1月、うつ病が業務上の事由によるものであるとは認められないとして、給付を支給しない旨の処分をした。一審原告は、審査請求を申し立てたが、審査官は、同年12月、審査請求を棄却した。
一審原告は、解雇は一審原告が業務上の疾病に罹患して休業していたにもかかわらずされたものであって違法無効であると主張して、雇用契約上の権利を有する地位の確認および本件解雇以降の賃金の支払いのほか、一審被告の安全配慮義務違反によって前記疾病に罹患したとして、債務不履行または不法行為に基づき慰謝料等の支払いを請求した。…
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