日本電信電話事件(東京地判平23・2・9) 同意しないまま移籍先で定年、「元」に再雇用求める 勤務できる業務や場所なし
組織再編に伴う転籍命令に同意しないまま移籍し定年に達した従業員が、転籍元での再雇用制度の適用を主張し労働契約上の地位確認を求めた。東京地裁は、転籍先で賃金を得ていたが、転籍に同意する明確な意思表示はなく命令は無効と判示。一方、高年法では退職者の希望に合致した労働条件での雇用を義務付けておらず、勤務可能な業務や場所は存在しないとして請求を棄却した。
希望する条件ムリ 転籍命令無効だが
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
会社(日本電信電話株式会社)は、平成11年7月のNTT再編成により、NTT東日本およびNTT西日本並びにNTTコミュニケーションズの3つの会社がそれぞれ発行する株式の総数を保有する純粋持ち株会社となり、電気通信の基盤となる電気通信技術に関する研究等を行っている。
労働者甲は、昭和40年4月に日本電信電話公社に雇用され、その後、昭和60年に民営化に伴う会社の発足により、労働契約が承継され、甲は会社の従業員となった。甲は、現在、全労協全国一般東京労働組合(東京一般労組)に加入している。
会社は、平成11年7月のNTT再編成により、NTT東日本等への人員移行が不可避となったことから、NTT再編成に先立つ同年3月、「再編成に伴う社員の人員移行等の扱いについて」と題する通達を出し、周知の手続きを経たうえで、甲に対し、同年6月24日、同年7月1日付けでNTT東日本に転籍する旨の内命を行い、会社は、甲を含む全社員に対し、NTT東日本等分割会社への転籍を包括発令した(本件転籍命令)。
甲はこれに同意しなかったが、同年7月1日、転籍後のNTT東日本の職場に赴き、業務に就いた。以後、NTT東日本から賃金、賞与、退職金を受けた。
甲は、平成19年3月31日をもって、会社およびNTT東日本の定年年齢に達した。…
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