学校法人兵庫医科大学事件(大阪高判平22・12・17) 教授選への立候補後、臨床担当を外され賠償求める 10年以上も差別的な処遇が

2011.08.29 【判決日:2010.12.17】
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 大学病院での教授選に無断で立候補した医師が、一切の臨床担当から外され賠償を求めた事案で、請求を一部認めた一審を不服として控訴した。大阪高裁は臨床機会がなければ、医療技術の維持向上や知識取得は困難で、医師の生命ともいうべき臨床機会を10年以上も与えなかったことは、合理的な裁量の範囲を逸脱した違法な差別的処遇で、精神的苦痛は大きいと判示した。

技術の向上困難に 裁量範囲から逸脱

筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)

事案の概要

 控訴人は、昭和49年5月に医師免許を取得した後、複数の病院勤務を経て、平成2年7月、被控訴人大学病院の耳鼻咽喉科の医局員となった。控訴人は、耳鼻咽喉科のD教授の下で臨床を担当し、平成3年9月には同科の助手になった。なお被控訴人大学病院の医師は、定期的に外部の関連病院に派遣されていた(以下、「外部派遣」という)。

 平成5年12月、平成6年3月をもって定年退職するD教授の後任教授を選出するため公募制による教授選が行われることとなり、耳鼻咽喉科の医局からはP助教授が推薦され、また外部からは被控訴人丙川が応募したが、その一方で控訴人がD教授に断りなく教授選に立候補した。D教授は激怒し、平成6年1月以降、控訴人を医学部の学生に対する教育担当および被控訴人大学病院におけるすべての臨床担当から外したが、外部派遣については控訴人も担当した。

 その後、教授に就任した被控訴人丙川も、控訴人に対して引き続き一切の臨床を担当させず、さらに平成11年11月には外部派遣の担当からも外し、以降、控訴人は自主的な研究活動以外に担当する職務を有しないこととなった。大学病院における臨床系の教授選考の基準として、多数の臨床経験に基づく高度の診療能力を有することが重視され、臨床の機会が与えられなければ、他大学を含めて教授に選出されることは極めて困難な状況にあった。…

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平成23年8月29日第2838号14面 掲載
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