佃運輸事件(神戸地裁姫路支判平23・3・11) 従業員同士がケンカ、使用者は安全配慮義務負うか 会社に暴力抑止義務はない
タンクローリー運転手が運行係と喧嘩し、双方が損害賠償を求め、運転手は会社の安全配慮義務違反も訴えた。神戸地裁姫路支部は、同義務は、業務遂行に必要な物的・人的環境の整備に関するもので、従業員が当然負うべき注意義務は含まれないと判示。会社に暴力抑止義務はないうえ、以前から暴力沙汰はなく予見もムリで、配置変更等の結果回避義務も負わないとした。
日常的なら別だが 予見することムリ
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
平成21年4月17日当時、Xは運行管理係として、Yはタンクローリーの運転手として、会社のK営業所に勤務していた。
Yは、同日午前9時過ぎころ、K営業所事務所内において、配車に対する抗議をしたところ、Xとの間でトラブルとなった。事務所内において、XとYは、お互いに胸倉をつかんだが、配車の責任者であるAが制止したため、XとYのつかみ合いはいったん収まった。
事務所外の駐車場に駐車されていた大型トレーラーの近くにおいて、XとYは口論となり、Xがトレーラーの運転席を背にしてYと正対する形でつかみ合いとなり、Xが足をYの足に引っかける形で、Yは転倒した。XとYが立ち上がった後、XはYの胸を突いた。Xは、同日午前10時過ぎころ、Yの持っていた缶コーヒーを手で払った。
Yは、その後同年8月3日まで、会社に出勤しなかった。Yは、加古川労基署から、療養・休業補償給付等の支給を受けた。
本件は、XがYに対し、Yの暴行により傷害を負ったとして、民法709条に基づき損害賠償の支払いを求め、YがXおよび会社に対し、Xの暴行により傷害を負ったとして、Xについては民法709条、会社については安全配慮義務違反または民法715条に基づき、各自、損害賠償の支払いを求めた事案である。本件の争点は多岐にわたるが、Xの暴行についての会社の安全配慮義務の有無に限定して判決を紹介する。…
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