日鯨商事事件(東京地判平22・9・8) 海外出張先から無断帰国、「業務契約」解除は解雇? 退職意思確認せずに手続き
オマーンへの海外出張者が、無断帰国を理由に会社から「中東業務契約」を解除された後出社せず、合意退職か解雇か争った。東京地裁は、在籍しつつ一部の業務を解除する規定は就業規則にはなく、退職の意思を確認せずに退職手続きを進めたことから、解除通知は解雇の意思表示に当たると判示。解雇権濫用で違法とし、再就職までに得られたはずの賃金を損害と認めた。
権利の濫用で違法 再就職まで補償を
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
被告Y社は生鮮魚介類の加工、売買等を目的とする株式会社であり、東京に事務所を有するほか、オマーンに事務所兼社宅を借りている。Y社は、中東における業務のため、外国語(特に英語)が堪能な海外スタッフを募集し、旅行業界での経験のある原告Xを採用した。
Xは昭和37年生まれの男性で、Y社と雇用契約を締結し、平成19年11月29日から稼働し、12月3日から22日までオマーンに出張した。Xは、20年1月7日に再びオマーンに出張し、2月27日に帰国し、また3月7日にオマーンに出張した。
Xは20年3月21日、日本へ帰国した。その前日、XはY社のA取締役と電話し、Aから、引継ぎと今後の業務への対応策を話し合う必要があるので、Y社代表者とAがオマーンに戻る翌21日までオマーンに残るよう言われたが、Xは航空券の日程変更ができないとして、当日帰国した。
Y社の従業員CはXに対し、3月23日、Xの「中東業務契約」を解除する旨のメールをX宛に送信し、同日Y社はXに対し、解除メールと同内容の「中東業務契約解除(解任)通知書」を発送した。…
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