セイビ事件(東京地決平23・1・21) 株主総会で社長解任企図した兼務役員らを一律解雇 懲戒委員会の審議は不十分
ビルメン会社の社長に対する株主総会での解任動議について、社長の不祥事を吹聴し株主と共謀したとして、兼務役員らが懲戒解雇されその無効を訴えた。東京地裁は、就業規則上「懲戒の審査および決定の手続き」をする懲戒委員会は、事実関係の把握や処分の内容を審議せずに懲戒解雇と結論付けたと判示。就業規則で定める適正手続きに反することから解雇無効とした。
関与把握せず処分 手続き規定に違反
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、債務者の執行役員等であった債権者X1および債権者X2が、債務者が行った、①平成22年4月30日付けで債権者らを「部長東京支店長付」とする旨の人事通達および②債権者らの同年6月11日付け懲戒解雇は、いずれも違法・無効であると主張して、労働契約に基づき、労働契約上の地位の保全と給与の仮払いを求めた事案である。
決定のポイント
使用者が労働者に対する懲戒処分を検討するに当たっては、特段の事情がない限り、その前提となる事実関係を使用者として把握する必要があるというべきである。そして、本件就業規則71条が、「懲戒の審査及び決定の手続」を懲戒委員会にかけるべきこと、懲戒処分に当たって、本人に十分な弁明の機会を与え、懲戒の理由を明らかにすべきことを規定しているのも、債務者として、事実関係を把握して懲戒処分の要否・内容を適切に判断するためのものであると解される。
特に、懲戒解雇は、懲戒処分の最も重いものであるから、使用者は、…
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