国・中労委(新国立劇場運営財団)事件(最判平23・4・12) オペラ歌手の出演契約巡る団交拒否を認めた判断は 業務遂行に不可欠な労働力 ★
オペラ歌手の加入する労組が、出演契約を巡る団交拒否は不当労働行為に当たると争った。一審、二審は労委の応諾命令を覆したが、最高裁は、不可欠な労働力として財団に組み入れられ、出演のため可能な限りの調整を行うよう要望されていたことや、基本的に出演の申込みに応ずべき関係にあり、時間や場所的な制約を受けていたことなどから、労組法上の労働者と判示した。
組織内へ組み入れ 労組法上の労働者
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
上告組合は、職業音楽家と音楽関連業務に携わる労働者の個人加盟による職能別労働組合である。
被上告財団は、年間を通して多数のオペラ公演を主催している。被上告財団は、毎年、オペラ公演に出演する新国立劇場合唱団のメンバーを試聴会を開いて選抜し、合格者との間で、年間シーズンの全ての公演に出演可能である「契約メンバー」と、被上告財団がその都度指定する公演に出演することが可能である「登録メンバー」に分けて、出演契約を締結していた。
甲野は上告組合に加入し、新国立劇場合唱団の契約メンバーとして、平成11年8月から同15年7月まで、毎年、出演基本契約を締結し個別公演に出演していたが、平成15年2月20日、同年8月から始まるシーズンについて、契約メンバーとしては不合格であると告知された。
上告組合は、平成15年3月4日、被上告財団に対し、次期シーズンの契約に関する団体交渉を申し入れ、被上告財団は、同月7日、甲野との間に雇用関係がないことを理由に団体交渉を拒んだ。
一審(東京地判平20・7・31)、二審(東京高判平21・3・25=本紙第2750号)が、不当労働行為性を肯定した中労委命令を取り消したため、組合が上告した。…
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