開成交通事件(東京地判平23・3・30) 定年退職したタクシー運転手へ社宅の明渡し求める 雇用関係終了により退去を
タクシー会社が、60歳定年で退職した運転手に社宅明渡しを求めた。東京地裁は、社宅の賃貸料は一般に貸していた部屋よりも低額で、敷金や礼金もなく、契約書には退職時に契約が無効になる旨記載されていたことから、賃貸借であるか否かを問わず、雇用契約の終了と同時に社宅契約も終了すると判示。運転手が主張した雇用継続の約束については事実関係を否定した。
賃貸借か問わない 契約書には明文化
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
X株式会社は、平成18年11月1日、Yと期間の定めのない雇用契約を締結し、同月30日、XとX代表者の母親の共有する建物の一室についてXY間で社宅利用契約を締結した。
当該社宅契約には、「Yが退職した場合には、社宅契約は無効となり、ただちに退去しなければならない」(1条)と定められ、月額利用料は7万3000円であった。なお、この建物は、一般にも賃貸され、一般の賃料より社宅利用料のほうが低額であった(ただし、他の賃貸人の賃料は明らかでない)。
Yは、平成21年に60歳の定年に達したが、定年後の雇用継続を確約されていたとして雇用契約の終了を争い、定年退職の後も社宅に居住し続けている。
Xは、定年退職により雇用契約は終了し、社宅利用契約は終了したとして、Yに対し、社宅明渡しおよび利用料相当損害金の支払い等を求めて提訴した。
判決のポイント
社宅の利用料が低額であり、敷金や礼金の徴収もしなかったこと、契約書1条に「当社を退職した場合は、この契約は無効となり、…
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