オリンパス事件(東京高判平23・8・31) 取引先の社員引き抜く上司を社内通報したら配転に 制裁的な意図で人事権濫用 ★
営業社員が、上司らによる取引先社員の引抜き行為を、社内コンプライアンス室へ通報した結果、3度も配転させられたのは無効と訴えた事案。一審は棄却したが東京高裁は、配転に業務上の必要性はなく、個人的な感情に基づくと判示。47歳で未経験の職種に異動させ昇格や昇給の機会を失わせたのは、不利益取扱いを禁じた社内規定に反し、人事権濫用とした。
業務上必要性なし 運用規定に反する
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
控訴人は昭和60年1月から被控訴人会社に勤務し、被控訴人Y1は被控訴人会社のIMS事業部事業部長であり、被控訴人Y2はIMS事業部の一部門であるIMS国内販売部の部長である。控訴人は、平成19年4月、被控訴人会社IMS事業部のIMS国内販売部NDTシステムグループ営業チームリーダーの職についた。
被控訴人会社は、控訴人に対し、平成19年10月、IMS事業部IMS企画営業部部長付への配置転換を命じた。
控訴人は、右配転命令は、控訴人が被控訴人Y1や被控訴人Y2らによる取引先企業(S社)の従業員の雇入れについて被控訴人会社のコンプライアンス室に通報したことなどに対する報復で無効であるなどと主張して、配転命令に従って勤務する義務がないことの確認を求めた。
また、違法な配転命令と上司による業務上の嫌がらせなどにより控訴人の人格的利益が傷付けられたなどと主張して損害賠償を請求した。
原審(東京地判平22・1・15)は、控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人が控訴したものである。…
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