国立大学法人T大学事件(東京地判平23・4・28) 「内縁の妻」と称し大学教授の死亡退職金を請求する 夫婦の生活実態認められず
死亡した大学教授の内縁の妻と称する女性が、死亡退職金の支払いを求めた。東京地裁は、支給規則で定める「婚姻関係と同様の事情にある者」とは、夫婦としての共同生活の実態が認められる事実関係をいうと判示。各自仕事を持ち、生計を異にしており、同居の事実も認定できないことなどから、親密な交際ではあるものの内縁関係には当たらないとして請求を棄却した。
生計や住居別々に 親密交際であるが
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
本件は、Yの設置するT大学の教授(E)の遺族であると主張するXが、平成21年11月30日、Yに対し、Eの死亡による退職に伴う退職手当の支払いを求めた事案である。
Xは、Eとの問で婚姻の届出をしていない。
Yの就業規則19条5号には、職員は死亡したとき、退職とし、職員としての身分を失うと規定され、同規則53条には「退職手当について必要な事項は、別に定める『T大学職員退職手当規則』による」とそれぞれ規定されていた。
Yの退職手当規則2条1項には、「退職手当は、職員(常時勤務するものに限る)が退職し、又は解雇された場合に、その者(死亡による退職の場合には、その遺族)に支給する」と規定され、同規則13条1項には「第2条に規定する遺族は、(1)配偶者(婚姻の届出をしないが、職員の死亡当時事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む)、(2)子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で職員の死亡当時主としてその収入によって生計を維持していた者、(3)略、(4)子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で第2号に該当しないもの」と規定されていた。
本件では、Xが退職手当規則13条1項1号所定の配偶者に該当するか否かが争点となった。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら