昭和シェル石油事件(東京地判平21・6・29) 男女別昇格管理を廃止後も賃金格差あると賠償請求 旧制度の差別的取扱い残存
男女別の年功序列的な昇格管理から、業績・能力評価に基づく新制度への移行後も格差が残るとして、女性社員らが不法行為に基づく損害賠償を請求した。東京地裁は、旧制度の資格をもとに新たな格付けを行い、処遇上も旧制度と連続性を持った昇格が行われていると判示。業務内容、平均勤続年数で男女間に差異が認められないこと等から不合理な差別とした。
前資格用い格付け 業務内容に差ない
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
被告は、石油類等の採掘、製造等を目的とした会社であり、原告ら12人は、昭和49年までに高校卒・短大卒として被告に入社した者である。
被告は、昭和60年から平成12年まで職能資格制度(以下、「旧制度」)を採用し、同制度の格付けに従い、基準内賃金の本給中の職務職能給を決定していた。職務職能給は、毎年の人事考課により昇格昇給がなされるが、実際は(平成5年およびその前後には)、高校卒・短大卒の女性社員を除く社員(多くは男性社員)については学歴別の年功序列的な昇格管理を行い、高校卒・短大卒の女性社員については、上位の資格への昇格をより困難にする別の基準で昇格管理を行っていた。
平成12年、被告はより成果を反映するシステムを構築すべく、新資格制度を導入。資格ごとの新「能力給」が本給そのものとなり、昇格昇給は、目標管理制度に基づく業績評価と新制度に基づく能力評価により決定された。毎年格付けが行われ、その際、資格要件を満たせば昇格するため、実質的に男女別の年功序列的な昇格管理は行われなくなったが、理論上はあり得るはずの飛び級昇格は行われず、また格付けの決定の際にも、過去の能力評価・業績評価の結果を勘案していたほか、移行時にも旧制度の資格をもとに新資格の格付けを行う等、旧制度との連続性を有していた。…
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