太陽自動車事件(東京地判平21・3・27) 裁判で便宜供与廃止は違法に、労組が復活求めたが 賠償金を支払い法律上解決
チェックオフ等、便宜供与の廃止を不法行為とした最高裁判決後も再開の要求に応じないこと等から労組が損害賠償を求めた。東京地裁は、廃止を巡る紛争は賠償金の支払いで法的に解決済みとして、復活する義務はないとしたが、会社が加盟する協同組合が労組に約した「便宜供与再開を検討」しなかったことは不誠実で団交権を侵害するとして50万円の支払いを命じた。
再開する義務なし 団交権侵害は認定
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、タクシー業Y社の従業員で組織する労働組合である。平成13年度の賃金交渉は妥結に至らず、不当労働行為申立てもなされるなかで、同年9月4日、YはXに対し、チェックオフ、組合事務所(民間アパートの一室)賃料の会社負担等の便宜供与の廃止を通告した。
同年12月に至り、Yの所属するH交運協同組合のA代表理事が、7項目の改善点を記載した書面(便宜供与について前向きに協議する旨の記載あり)をXに交付し、同年度の賃金協定を締結し、未支給の夏季一時金も支給して事態が収拾した。
Xは、平成14年の春闘以降、便宜供与の復活を要求したが、Yが応じなかったため、Xは同15年、不当労働行為救済を申し立て、また民事訴訟で不法行為および債務不履行を理由とする損害賠償請求を提起した。同17年、東京地裁は便宜供与廃止は不法行為に該当するとし、Yに対し200万円の損害賠償を命じ、その後、高裁・最高裁もこれを支持した(以下「別件訴訟」)。都労委では同19年に、不誠実団交の救済命令がなされた。
本件はXがYに対して、Yが便宜供与の復活をしないこと、不誠実団交を理由として、無形損害として300万円および組合事務所賃料分279万円の損害賠償を求めた事案である。…
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