北大阪労働基準監督署長事件(大阪高判平21・8・25) 居酒屋店長が心筋梗塞、一審認容の労災不支給は… 休憩1日15分で疲労が蓄積 ★
居酒屋店長が発症した急性心筋梗塞をめぐり、労災不支給処分の取消しを求めた事案の控訴審。一審は月80時間未満の時間外労働を理由に業務との因果関係を否定したが、大阪高裁は、閑散時でも顧客対応の可能性があり、実労働に従事していない時間も手待時間と認定。休憩は実質15分程度で、月100時間以上の残業で蓄積した疲労と発症との相当因果関係を認めた。
実労働以外は手待 残業も月100時間超
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
労働者X(昭和40年生)は、平成12年9月1日、居酒屋チェーン店を経営するマルシェ㈱に、アルバイトとして就労後、同年10月1日から正社員に採用、同13年1月16日からH店店長として就労。
Xは、平成13年8月13日、店内で胸の痛みを感じるとともに呼吸が苦しくなり、病院で診察を受けたところ、急性心筋梗塞と診断された。本件疾病の発症当時、Xは35歳であった。Xは、同15年12月末ころ会社を退職した。
Xは、平成16年7月20日、北大阪労働基準監督署長に対し、労災申請をしたが、同17年2月14日不支給処分を受けた。その後、審査請求、再審査請求ともに棄却されたため、その取消しを求めた。
一審判決(大阪地判平20・12・22)は、Xの業務と心筋梗塞発症の間に相当因果関係を認めることができないとしたため、Xは控訴した。
判決のポイント
何かあれば即時に実労働に就くことを要する場合は、休息を保障されず、業務によるストレスから解放されているとはいえないから、業務の過重性を判断する際にも、休憩時間ではなく、労働時間と評価すべきである。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら