ケントク事件(大阪地決平21・5・15) 難病理由にパートへの転換は無効と従前地位確認へ 健康状態の変動は想定範囲
2010.02.22
【判決日:2009.05.15】
外食FC店の店主代行が重症筋無力症の罹患を理由にパートへ身分変更されたため、正社員たる地位や賃金仮払いを求めた。大阪地裁は、勤務を尚早とした産業医よりも時間外労働すら可能とする主治医の意見を斟酌し、職種変更が必要な「心身上の理由」は認められないと判示。負荷の軽い職場へ配置可能であり、変更の有効性について弁明がなされておらず無効とした。
原職以外へ配置可 主治医判断を重視
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
債務者は、レストランおよび食堂等の経営を行う会社である。
債権者は、昭和51年4月、債務者に正社員として雇用され、「ミスタードーナツ」(MD)の各店舗の店主等を経て、平成4年11月から本社フード関連事業本部マネージャーとしてMDの各店の運営全般を担当した。
平成17年6月、債権者は、「ザ・どん」事業担当となったが、当時の肩書は「本社フード関連事業本部次長」であった。同19年1月、債権者は、「ザ・どん」F店の店主が無断欠勤したため店主代行として勤務し、その後も他店で店主代行の仕事をしていた。仕事は午前9時30分から午後11時に及び、仕込み、納品食材の検品、倉庫の整理、食材の発注、配膳、清掃等、多岐にわたっていた。
平成20年3月12日、債権者は、重症筋無力症の診断を受け、同年4月15日、胸腺拡大摘出手術を受けたが、その後も投薬治療と経過観察を受けており、治癒には至っていない。…
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平成22年2月22日第2766号14面 掲載