国・相模原労基署長事件(横浜地判平21・7・30) 独立後に石綿肺がんを発症、特別加入の労災給付か 労働者時代のばく露が原因
複数の事業場で石綿ばく露作業に従事後、独立した代表取締役が肺がんを発症し、特別加入の労災保険を適用されたため処分取消しを求めた。横浜地裁は、石綿関係の法規制が強化される以前の労働者期間中にばく露した高濃度の石綿と疾病の因果関係を認定。事業場を転々としても、ばく露状況が不明な場合に限って「最終ばく露事業場」の労災保険関係を適用すべきとした。
法規制強化する前 転職者でも認定可
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、昭和30年4月から同52年3月まで、数社において、CVビニール電線、配線工事業等を行い、労働者として就業、稼働していた。
Xは、昭和52年4月から同62年2月まで、数社で日雇の常用という立場で稼働し、残業代を1時間単位で支払われ、通勤交通費が支給される等していた。また、工具類、道具類は会社が支給するものを用いていた。この間におけるXの業務内容は電気配線工であった。なお、社会保険は未加入で報酬支給時も源泉徴収はされていなかった。
昭和62年3月、XはA社を設立して取締役に就任し、同様に電気配線工事を行っていた。その当時、Xは3~4人の職員を抱えていた。その後、平成13年5月、代表取締役を辞任し、A社の職人として稼働した。なお、Xは、同6年11月から同13年3月までの間、労災保険に特別加入していた。
Xは、昭和30年4月から、ビル、学校等の大型建物の電気配線工事に従事していたが、その作業においては石綿製品を切断したり、石綿を直接手でつかんだりしたため、Xは長期間かつ継続的に石綿にばく露した。…
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