アルプス電気事件(仙台高判平21・6・25) 法外組合と手当打切りで合意、実務職のみ対象だが 就業規則に明文規定存せず
電子機器製造の工場閉鎖に伴い異動した定年退職者が、別居手当等を2年で打ち切られたのは違法として損害賠償を求めた。一審は棄却したが、仙台高裁は、就業規則に手当打切りの規定はなく、法外組合との協定が就業規則と一体の効力を有するかは疑問と判示。実務職である地域限定社員の手当を打ち切る一方、企画職に継続したこと等は合理性を欠くとして賠償を命じた。
協定と一体か疑問 職群で不利益甚大
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、被控訴人Y会社の社員で住居の変更を伴う異動に応じた控訴人Xが、被控訴人の就業規則では住居の変更を伴う異動があった場合には別居手当、単身赴任用社宅費、留守宅帰宅旅費(以下「本件手当」という)を支給する定めになっているにもかかわらず、異動後2年を経過した平成16年4月分以降、本件手当の支給が打ち切られたことを違法として、被控訴人に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、同年4月分から平成18年2月分までの本件手当相当額231万3378円を経済的損害とし、これに慰謝料120万円を加えた損害の賠償を求めた事案である。
原審(盛岡地判平20・9・2)が控訴人の請求を棄却したため、控訴人が不服を申し立てた。
判決のポイント
本件就業規則変更の前後を問わず、Y社の就業規則に、Xのような実務職群に属する社員に転勤を命じた場合に、本件手当の支給対象から外す旨の明文の規定は存在しない。…労組法上の労働組合には該当しないY社労働委員会(AWA)との本件協定が就業規則と一体のものとして扱われるべき性質を有するかについては、そもそも疑問がある。…一体のものと扱われるべきものであるとしても、本件支給打切りの根拠となるべき就業規則変更の事実は認められない。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら