東亜自動車交通事件(大阪地判平21・9・3) 退職時に免許取得費の返還要求、賠償予定で違法か 消費貸借契約が成立し有効

2010.04.19 【判決日:2009.09.03】
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 タクシーの元乗務員2人が、退職時に2種免許取得費用の返済を求められたため労基法の賠償予定の禁止に当たるとして損害賠償を求めた。大阪地裁は、返還免除特約付きの消費貸借契約として成立しており、「800日乗務」の要件が満たされない限り返還義務を負うと判示。資格は他社でも活用可能で、会社は教習費を代わって支出したに過ぎず、法違反でないとした。

他社で資格活用可 単に費用を立替え

筆者:弁護士 岩本 充史

事案の概要

 平成16年1月ころ、X1、X2は、タクシー運送業を営む株式会社Yに乗務員としての入社申込みをした。両者とも2種免許は取得していなかった。

 Yの常務取締役および総務部長であるAが、Xらとの面談の際に示した乗務員募集要項には、①免許取得の費用について、授業料等は会社が立て替えること、②教習費として日額1万円を支給すること、②就労支度金として20万円を4回分割で支給すること、③自動車学校入校時までに金銭消費貸借契約を締結し、2種免許取得に要した費用(学校費用、教習費)および支度金(約50万円)は、乗務員として800日の乗務日数を満たしたときは返済義務を免除すること等が記載されていた。

 入社を希望したXらに対して、Aは入社申込書、労働契約書、金銭消費貸借契約書、誓約書を交付し、Xらは、本人および保証人が署名押印したものを提出した。金銭消費貸借契約書には、借受金は実働800日乗務完了するを以て、返済の義務を免除する等と記載されていた。平成16年7月、YはXらに対し授業料、教習費、就職支度金の明細が記載された自動車教習所明細書を示し、Xらは特に異議を申し立てることもなく署名した。

 その後、X1は平成18年12月15日に、X2は同17年5月20日に退職した。X1の実乗務日数は784日、X2は363日で、いずれも800日に足りないことからYは教習費等の返還を求めた。X2はこれに応じて48万7495円を支払った。

 X2は、返還合意が労基法16条に違反すること等を理由に、支払った金員の返還を求めた。また、XらがYに対し不法行為に基づく損害賠償の支払いを求めて提訴した。…

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平成22年4月19日第2773号14面 掲載
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