H協同組合事件(大阪高判平28・2・3) 労組と協議せず解雇、協定書に違反と地位確認請求 従事業務なく整理解雇有効
労働組合担当として入社後、従事していた業務がなくなったなどとして、整理解雇された事案。解雇手続きに関し、労組と事前協議を義務付けた協定書に反するなどと解雇無効とした一審に対し、二審は労働契約で特定された業務が確保できない状況が常態化し、人員削減の必要性や人選の合理性はあると判断。解雇予告後の団交は行き詰まり、交渉進展の見込みもなかった。
労働契約では限定 “3要素”を満たす
著者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
控訴人(一審被告)は、組合員の取り扱う生コンクリートの共同受注・共同販売等の事業を行う事業協同組合である。
被控訴人(一審原告)は、平成20年8月1日、控訴人との間で期間の定めのない労働契約を締結し、労働組合や協同組合に加入していない生コンクリート業者への対応等に当たっていた。平成21年1月、被控訴人は、控訴人の専務理事に就任したため、労働契約は終了したが、従前と同じ業務に従事していた。その後、労働組合対応等の必要性が薄れたため、控訴人は、被控訴人に従事させる業務がない等として再雇用を拒否していたが、被控訴人の所属する労働組合(以下単に「労組」という)からの強い要請を受け、平成23年7月、再度、被控訴人と労働契約(以下「本件労働契約」という)を締結し、被控訴人を協同組合員の工場に派遣し、ミキサー車乗務や車両誘導等の現場立会いの業務に従事させることとした。その後、半年ほどは、協同組合員からの派遣依頼があったが、平成25年になると5月までに3回依頼があっただけでそれ以降は全くなくなった。控訴人は、平成25年4月11日、被控訴人に対し解雇予告を通知したが、労組との団体交渉を経て、同年5月10日、これを撤回した。この際、控訴人は、労組との間で「職員の身分…に影響を及ぼす恐れがある場合は、労組と事前に協議し円満解決を図る」旨の協定書を締結した。しかし、同年12月20日、控訴人は、事前に労組と協議をすることなく、被控訴人に対し解雇予告を通知した(以下「本件解雇」という)。控訴人は、労組から団体交渉の申入れを受け、…
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