東日本電信電話事件(東京地判平21・11・16) 賃金減額伴う転籍拒否し60歳定年に、高年法違反か 子会社で再雇用確保と評価 ★
60歳定年制が、定年後の雇用確保を義務付けた高年法に反するとして元社員らが地位確認を求めた。東京地裁は、60歳定年か資本的な密接性がある子会社へ転籍するかを選ばせる制度について、労働者の希望に合致した労働条件であることまで要求せず、事業主の実情を踏まえた多様な雇用形態を許容する趣旨と判示。子会社で雇用が確保されると評価して請求を棄却した。
就労の形態は多様 資本的な関係密接
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Y社では、平成14年に50歳の時点で、①退職・再雇用型と②60歳満了型を選択させる制度を導入した。
①退職・再雇用型とは、51歳以降グループ会社に転籍し、60歳まで勤務した後、61歳以降65歳まで契約社員として再雇用される雇用形態であり、定年までの給与は15~30%減額される(一時金等の一部補填あり)。②60歳満了型は、満60歳までY社に勤務して定年退職をし、再雇用はないという雇用形態である。選択通知をしない者は、②を選択したとみなしていた。
Xらは、選択通知をしないままY社に勤務し、60歳到達後の3月31日をもって定年退職と扱われた。Xらは、60歳定年制を定めた就業規則は、高年齢者雇用安定法(高年法)9条1項に違反して無効であり、結果、定年の定めがないことになるから、60歳以降もY社の従業員たる地位を有しているとして、雇用契約上の地位確認と賃金の支払いを求め、また、Y社がXらの雇用契約上の地位を否定したことは不法行為に当たると主張して、損害賠償を請求した。
判決のポイント
Xらは、高年法9条1項違反の効果として、65歳未満定年制の定めが無効となり、定年の定めがないことになると主張している。…
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