大林ファシリティーズ事件(東京高判平20・9・9) 住込管理員が居室で晩酌、労働時間に当たるか 労働からの解放でなく待機
マンションに住み込む管理員が、居室での不活動時間も労働時間に当たると割増賃金を求めたもので、最高裁は、指揮命令下の時間帯を広く認めた原判決を破棄し高裁へ差し戻した。東京高裁は、最高裁判決を踏襲し、平日の犬の散歩等を労働時間から控除したが、居室での晩酌や趣味に興じる時間にも住民らへの応対の可能性があり、待機中であるとして労働時間性を認めた。
応対の可能性あり 指揮命令下と認容
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
会社は、本件マンションの管理組合から、マンションの管理業務の委託を受けていた。
管理委託契約においては、管理員の業務につき、管理員は住み込みとすること、執務時間は午前9時から午後6時までとすること、休日は日曜日、祝日および管理員の有給休暇の日とすること、執務場所は管理員室とすることが定められていた。
被上告人およびその夫A(後に死亡、被上告人ら)は、平成9年3月、会社にマンション管理員として雇用され、平成12年9月まで、住み込みで勤務した。
会社の就業規則には、①所定労働時間は、1日8時間(始業午前9時、終業午後6時、休憩正午から午後1時まで)とする、②休日は、1週につき1日の法定休日(日曜日)および法定外休日(土曜日、祝日、夏期、年末年始等)とする、③休日勤務をした場合は振替を認めることができる旨の定めがあった。
ア 平日
(ア)会社は、所定労働時間内に、①管理員室での受付等の業務、②1階の店舗に納品される商品を収納したコンテナの台数の確認、③水道水の異常の有無の点検、④建物内外の巡回、⑤自転車置場の整理、⑥リサイクル用ごみの整理、⑦工事業者や来訪者の駐車依頼に対する対応、⑧宅配物等の受渡し、⑨管理日報・管理業務報告書の記載その他の報告等の業務を行うよう指示した。…
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