早稲田大学(年金減額)事件(東京高判平21・10・29) 同意得ず教職員退職年金を減額、一審無効としたが 従来の給付水準では破綻も
早稲田大学が勤続20年以上の退職者等に支給する年金を減額したため、受給者約160人が無効を求めた。請求を認めた一審に対して東京高裁は、給付総額が収入総額を上回り、不況の長期化から運用益も確保できず、基金の運営は不安定であり従来の給付水準では破綻も予想されると判示。3分の2を超える受給者が同意していることも踏まえて年金減額は有効とした。
制度維持に不可欠 3分の2は賛同済
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Yは大学等の学校を設立している学校法人である。Xらは、いずれもYに20年以上職員として勤務した後に退職した者もしくはその遺族である。
Yは、昭和33年8月1日施行のY大学年金規則を制定し、本件年金制度を導入した。
年金規則には、教職員年金基金を設定して同基金より年金給付を支出すること、同基金はYの繰入金・拠出金、教職員の拠出金、寄付金および基金の運用益により構成することが定められていた。
年金の支給年額は、在職20年の者は退職時の平均本給月額の4カ月分で、在職期間が増えるたびに増額されていた。また退職教職員が死亡したとき、その者と生計を共にし、かつ扶養されていた配偶者等に、教職員等が受けるべき年金の2分の1を支給することとなっていた。
平均的な年金受給額は教員で約300万円、職員で約250万円で、これに国民年金および厚生年金の平均的な受給額である300万円を加えると、教員で平均約600万円、職員で平均約550万円となっていた。
年金基金の収支は、平成4年以降、ほぼ一貫して、運用益を除く拠出総額よりも給付総額が上回るようになり、平成10年度には給付総額が収入総額を上回ったこと、また、平成9年以降、株価の乱高下や超低金利政策により資金運用環境が厳しくなり、運用益収入は不安定となっていること、…
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