フィンエアー事件(東京地判平22・1・15) フライト延長でマニュアルに基づき欠員手当を要求 事後的な解釈基準ではない
客室乗務員(CA)11人が、予定時間を上回るフライトとなったため、「マニュアル」で定めるCAの数に足りないとして欠員手当を求めた。東京地裁は、結果として12時間を超えた乗務で、超勤手当に加えて欠員手当を支給すれば公平を失すると判示。遡及規定もないうえ、マニュアルは行動指針に過ぎず、賃金規定を補充する事後的な解釈基準ではないとして請求を棄却した。
日常業務の「指針」 遡及規定は不存在
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
Y社(フィンエアー・オイ)は、フィンランドに本社をおく航空会社である。成田や関空等とヘルシンキ間を運航しており、日本支社の従業員は71人(平成20年9月末時点)である。
日本支社の就業規則によると、「賃金、手当については賃金規定による」旨定めており、その賃金規定の日本人客室乗務員(JCA)規定には、主に以下のような手当の定めがあった。
① フライト乗務超過勤務手当…実際に乗務したフライト業務時間が、スケジュール時間を超えた場合、超過した時間に対して1分につき250円を支払う。なお、時間外勤務手当と重複する場合も支払う。
② 欠員手当…フライトの合計編成人員に欠員が生じた場合、計算式(略)にて支払う。
他方、Y社は、平成15年12月ころ、アジア客室乗務員を対象としたワークマニュアルを作成した。これは、それまで利用されてきたフィンランド語のワークマニュアルを直訳したものである。本件ワークマニュアルおよびその元となったフィンランド語のワークマニュアルは、利用客に対する機内サービスの質を維持するために、フライト編成時点(飛行機が出発する前)において、フライト予定時間等を把握したうえ、客室乗務員の人員数を確保して対応しようとする規定である。これによると、「12時間を超えるフライトの場合、客室乗務員は12人で固定する」と定められていた。…
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