藤ビルメンテナンス事件(東京地判平20・3・21) 産廃処理業務の残業、出来高給に割増分含む? 時間外分を特定できず無効
廃棄物の夜間収集に従事した元従業員が、在職中の深夜労働を含む割増賃金を請求した。東京地裁は、時間外割増は能力給に含まれる旨就業規則に定められているが基礎となる算式はなく、収集重量に応じた出来高に時間外分がどのように含まれるか明示されず、黙示にも合意は成立していないとして請求を認容した。なお深夜分を基本給に含むことは不合理でないとした。
算式なく内訳不明 概算可能な深夜分 定額払い有効
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
藤ビルメンテナンスは、一般廃棄物、産業廃棄物の収集、運搬および管理等を目的とする会社で、労働者甲は、会社との間で雇用契約を締結して、横浜支店に勤務していたが、平成18年1月26日に解雇により退職した。甲は、在職中の深夜労働を含む残業手当を退職後に会社に対して請求した。
会社の就業規則および賃金規程によると、賃金の種類は基準内賃金としての基本給と、基準外賃金としての能力給(運収を基準とする算式による出来高)、運転管理手当、時間外手当、休日手当等からなっていた。また、割増賃金の率は時間外および所定外休日が125%、深夜が25%、法定休日は135%とされていたが、深夜割増手当は基本給に含まれ、能力給または運行管理手当には時間外割増賃金が含まれる旨が定められていた。
甲は、能力給の「算式」なるものは就業規則にも賃金規程にも存在しないし、労働者に周知されることすらなかった「算式」は、使用者と労働者との間の法規範たる性格を有せず無効であると主張した。
本件の主な争点は、①基本給に深夜割増が含まれているか、②能力給に時間外割増が含まれているかという2点である。本判決は、①には含まれるが、②には含まれないとした。…
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