社団法人キャリアセンター中国事件(広島地判平21・11・2) 登録型派遣を中途解約し解雇、残余期間の賃金請求 合意ない満了前の契約解消
登録型の派遣労働者が、派遣先の事情による派遣契約解消に伴い解雇されたため、期間満了までの未払賃金等を求めた。広島地裁は、派遣契約の中途解約条項について、労働者に明示されず、労働契約終了についての合意はないと判示。解雇が許される「やむを得ない事由」があるかは、派遣元と先を一体とした「使用者側」でみるとしたが、経費削減が理由として否認した。
締結時に明示せず 元・先で決めても
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
Yは、平成10年3月に公益認定を受けて設立された社団法人である。その主たる事業目的は、高齢者の就業機会を確保・提供するため、無料の職業紹介事業および労働者派遣事業を行うことである。
平成14年9月、Yは、雇用する労働者を、訴外Zに派遣することを目的とする労働者派遣基本契約を締結した。本件基本契約には、主に以下の条項が定められている。
① この契約条項は、別途両者間で締結される労働者派遣個別契約に適用されるが、派遣される労働者の労働条件その他は個別契約に定めるものとし、個別契約の条項が本契約に優先する。
② 個別契約の中途解約
当事者双方は、…派遣期間満了前に派遣労働者の責に帰すべき事由以外の事由によって個別契約の解除が行われた場合、訴外Zの関係会社等での就業を斡旋する等により、…新たな就業機会を確保するものとする。
Xは、平成18年12月上旬、Yに派遣労働者として登録後、派遣労働契約の締結を経て、Yと訴外Zとの個別契約に基づいて、通訳・翻訳業務を目的として派遣された。その後、XとYは、雇用期間を同19年11月1日から同20年10月31日までとする派遣労働契約を締結した。
Yは、平成20年4月7日、Xに対し、電子メールにより、訴外Zから業務量の縮小という理由で同年5月31日付で契約解除の連絡があったことを伝えるとともに、Xに対し、同日付けで本件労働契約を中途解約する旨の通知をした。…
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