協和出版販売事件(東京高判平19・10・30) 定年延長措置で旧年齢から嘱託に、不当と提訴 不利益変更には当たらない
改正高年法の施行で55歳から定年を延長したが60歳まで嘱託となった9人が、賃金減額を伴う就業規則の変更は不利益変更であると差額を請求した。東京高裁は、新就業規則の内容は私法秩序に適合しており必要最小限度の合理性があると判示。改正が既得権を奪い、不利益を課すものとはいえない以上、内容が合理的か否かで法的効力を判断するのは相当でないとした。
既得権を侵害せず “私法秩序”に適合
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議 東京大学法科大学院客員教授)
事案の概要
従来55歳定年の被控訴人(Y社)が、平成10年5月以降、改正後の高年齢者雇用安定法の施行に伴い、60歳定年とし、併せて55歳に達した翌日から嘱託社員としてそれまでの従業員賃金とは別の給与体系とし、これを従業員に適用したことから、控訴人ら(X1ら)は、そのような55歳到達以降の大幅な給与減額による就業規則の変更は不利益変更に当たり無効であるとして、本来支給されるべき賃金額と実際に支給された賃金額との間の差額並びに控訴人らの一部の者らによる時間外賃金に関する同様の差額について、被控訴人に対し請求した事案である。原審(東京地判平18・3・24)は、控訴人らの請求をいずれも棄却した。そこで、控訴人らがこれを不服として控訴した。
判決のポイント
本件就業規則の変更は、定年を延長する面でも、55歳から60歳までの賃金の面でも、退職金の面でも、従業員に不利益に変更された点はなく、就業規則を不利益に変更したものということはできない。
控訴人らは、仮に本件就業規則の変更が不利益変更ではないとしても、不利益変更の場合に準ずるものとして、不利益変更の場合と同様の判断基準によって変更の法的効力を判断すべきであると主張するが、労働者の既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課するものとはいえない就業規則の変更について、高度の必要性に基づいた合理的な内容か否かの判断基準により法的効力を判断するのは相当ではない。…
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