泉州学園事件(大阪地裁堺支判平21・12・18) 私立校が生徒激減による経営難から教員を整理解雇 4要素すべての充足は不要
教員5人が生徒激減による経営悪化を理由に整理解雇されたため地位確認等を求めた。大阪地裁堺支部は、協議を尽くさず問題はあるが、整理解雇の4要素すべてが具備されなければ解雇無効となる根拠はないと判示。人件費率から削減の必要を認め、希望退職募集で解雇回避努力をしたこと、懲戒歴や年齢による人選も合理的として処分歴のない1人を除き解雇有効とした。
懲戒歴や年齢勘案 協議は不十分だが
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
被告は私立高校であり、原告ら5人は被告の専任教諭であった。被告の生徒数は、平成元年度は1843人であったが、その後減少傾向が続き、コース編成の改編等を行ったものの、同19年度には412人となった。
被告の主な収入である学生生徒等納付金も減少し、同8年度には4億6578万円であったものが、同19年度には2億890万円となった。そこで、被告では、同15年度以降、複数回にわたり賃金・賞与の削減を通じた人件費の削減や希望退職の募集を行ってきたが、経営改善には至らなかった。同19年度の累積赤字は12億6513万円に達する等、極めて資金繰りに窮した状態であった。
被告の同18年度の専任教員の1人当たりの人件費は約636万円で、大阪府の私立高校の平均の68%であったが、1人当たりの生徒数が10.8人と平均より6人少なかった。被告は、同19年度予算における消費支出超過額を専任教員1人当たりの人件費の平均で除した数値をもとに18人の専任教員を削減することとし、希望退職者等11人のほか7人の専任教員を整理解雇することとした。
被告は、同20年3月29日付で直近2年度の懲戒歴を基準として勤務態度および能力に問題があった者ら3人のほか、52歳以上の者4人を整理解雇した。…
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