C病院(地位確認等)事件(盛岡地判平20・3・28) 院長急逝で新病院を開設、従業員も全員雇用? 使用者たる地位の承継なし
院長の死亡に伴う廃院・全職員の解雇後に開設した病院に不採用となった元職員ら34人が、新院長が使用者の地位を承継したとして労働契約上の地位確認等を求めた。盛岡地裁は、経営状況は債務超過状態にあり、従業員を選別し給与水準を引き下げたうえで新規採用することを条件に開設者となったこと等から、事業譲渡の合意があったとは認められないと判示した。
事業譲渡といえず 雇用契約は不存在
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、Zが開設したA病院に看護師等として勤務していたXら34人が、Zの死後に同病院と同じ施設で病院を開設したYに対し、従業員としての地位の確認および賃金の支払いを求めた事案である。
Yは、Zの実弟の妻で、大学病院に医師として勤務する傍ら、A病院に非常勤医師として勤務していたが、Zが平成17年5月28日に急逝したため、相続人、A病院の関係者等の要請を受け、病院開設者となることを引き受けた。YはC病院の名称で、実質的に7月1日から病院を開設することとし、6月16日、従業員の募集を院内に掲示する一方、A病院としては、同月20日、全員に対し同月30日付で解雇する旨の通知を交付した。
Xらを含む職員のほとんどがC病院に応募したが、Yはそのうち88人を採用し、Xらを含む35人を不採用とした。採用辞退もあって、常勤者83人のうち3人を除くほぼ全員が元A病院の従業員であった。
Xらは、Xらの雇用主たる地位がYに譲渡されている、あるいは新たな雇用契約を明示または黙示に締結した、もしくはそのように解釈されるべきであると主張して提訴した。…
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