もみじ銀行事件(最判平22・3・16) 退任取締役の同意得ず企業年金打切り認めた判断は 契約内容の一方的変更ムリ ★
銀行の退任取締役が、同意しない者にも企業年金打切りの効力が及ぶとした原審を不服として上告。就業規則の不利益変更法理を準用して経営状況等から廃止を認めたものだが、最高裁は、総会決議により支給契約が成立し、改廃の根拠規定もなく、画一的処理が制度上要請されるとの理由のみで、同意を得ずに廃止することはできないとして、原判決を破棄し高裁に差し戻した。
画一的処理は不要 破棄し高裁差戻し
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
会社(株式会社もみじ銀行)の取締役を平成11年6月29日に退任した甲について、会社は、同日開催の定時株主総会において、会社の定める一定の基準により退職慰労金を贈呈することとし、具体的金額、贈呈の時期・方法等は取締役会に一任する決議をした。
甲は、役員退職慰労金支給規程(内規)に基づき、一時金5683万円のほか、20年間にわたり月額13万3000円が支給される退職慰労年金を受給していたところ、同16年4月12日の取締役会決議で内規が廃止され年金を打ち切られたため、会社に対し同年5月から同19年4月までの未支給の退職慰労年金478万8000円の支払等を求めて訴えを提起した。
一審(東京地判平20・5・22)は、年金額および支給方法等は、会社と退任取締役間の契約内容となり、契約当事者を拘束するから、取締役会において内規を廃止する旨の決議をしたとしても、取締役がこれに同意しない限り、既に具体的に発生している年金の…請求権を失ったりすることはない等として、甲の年金請求を認容した。
二審(東京高判平21・3・19)は、会社の経営状態等に照らし、…年金制度廃止の必要性は高く…取締役会決議による退職金規程の廃止により退職慰労年金を廃止することができ、同意しない甲に対してもその効力を生ずるとして、甲の請求を棄却したため、甲が上告等の申立をした。本件は、最高裁の判断である。…
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