西松建設ほか事件(東京地判平22・3・19) 下請持込みの工具で感電、注文者にも賠償を求める 雇用関係なく安配義務なし
下請従業員が発電所工事中に感電したため、注文者、元請、下請の計3社へ不法行為に基づく損害賠償を請求した。東京地裁は、注文者は設計監理のみを行い安衛法上の事業者等に当たらないうえ、安全配慮義務を課すべき雇用契約に準ずる法律関係も認められないが、元請と下請に対しては、現場へ持ち込まれた電動工具の点検方法が不十分として賠償請求を一部認めた。
直接に指導行わず 元請の責任は認容
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
本件は、被告Y2社が被告Y3社から受注した発電所の新設工事につき、Y2の下請会社である被告Y1社の従業員としてこれに携わったXが、工事作業中に感電災害に遭って受傷し、心的外傷後ストレス障害(PTSD)等の後遺障害が生じたとして、被告らに対し、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行ないし不法行為(共同不法行為)に基づき、損害金等の支払いを求めた事案である。
Xは、工事の下請人であるY1の従業員として、工事現場で作業に従事しており、Y3との間に雇用関係はなかった。Y1を下請人に選定したのは、元請人たるY2であり、これにY3が関与することもなかった。
工事の設計図や仕様書等を作成したのは、請負契約の発注者たるY3であり、Y3は、工事の進捗状況等の確認(設計監理)を行っていた。Xらが使用した電動工具は、Y1等の施工会社が自らの費用で準備した。
Y3が設置した電気安全専門部会は、各受注業者(Y2も含む)が使用する受電設備や配電盤設備等の維持・保安の向上を相互にチェックする組織で、現場で用いる電動工具等の安全性確認を行うこともなかった。
Y2の工事事務所の副所長Fは、工事現場の受変電設備、電線路、分電盤等の負荷設備等につき、破損の有無等の安全性を点検したうえで、結果を電気主任技術者であるN(Y3の従業員)に報告していたが、この点検は、個々の工具の安全性を対象とするものではなかった。…
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